未来のために残す命のリレー 〜さい帯血の可能性と選択〜
出産は、家族にとってかけがえのない瞬間です。そしてその大切な時間に、もうひとつ大きな可能性が秘められていることをご存じでしょうか?それが「さい帯血(臍帯血)」です。
さい帯血とは?
さい帯血とは、赤ちゃんと母体をつなぐ「へその緒(臍帯)」と「胎盤」の中に流れる血液のことです。この血液は、造血幹細胞と呼ばれる特殊な細胞を豊富に含んでおり、血液のもととなる細胞を作り出す力を持っています。
かつては出産後に捨てられていたこの血液が、白血病や再生不良性貧血などの治療に用いられる再生医療の資源として注目されるようになりました。
さい帯血の活用方法
現在、さい帯血の活用には大きく分けて以下の2つの道があります。
- 公的バンクへの提供(さい帯血バンク)
患者のために無償提供する仕組みで、ドナー登録を行うことで第三者の治療に役立てられます。骨髄バンク・さい帯血バンクのホームページを載せおきます。
- 私的保存(民間バンク)
自分の子どもや家族の将来の治療に備えて、費用をかけて保存する選択肢です。ただ、私的利用の確率としては10万分の1であるため、公的バンクへの提供が最も良いと思われるが、それぞれの家庭の考え方にもよると思います。
どんな病気に使われるの?
造血幹細胞を使った治療は、主に白血病、悪性リンパ腫、再生不良性貧血などの治療に用いられます。成人の骨髄移植と比べて適合条件のハードルが低く、治療開始までの時間が短いという利点があります。
また、研究が進むにつれ、脳性まひや自閉症などの神経系疾患への応用可能性も期待されています(※現時点では臨床試験段階)。
さい帯血保存のメリットと課題
【メリット】
- 将来的な治療の選択肢を増やす
- 適合ドナーがいなくても自己由来で使える可能性
- 医療の進歩によって新たな用途が見つかる可能性も
【課題】
- 民間保存は高額(初期費用+年間保管料)
- 将来使う保証はない
- 保存年数に限りがある(通常15~20年)
このように、「備え」としての選択肢を持てることは大きな安心材料になり得ます。ただし、コストや実用性をよく見極めて決断することが大切です。出産により新たな命の誕生と、今ある命を救うことにも使えるということで、さい帯血バンクへの提供を検討してみてもいいのではないでしょうか?
私たちにできること
出産のタイミングにしか得られない「さい帯血」は、一度しかチャンスのない貴重な資源です。その可能性をどう活かすかは、ご家庭の価値観によっても変わるでしょう。公的提供という形で誰かの命を救う役割を果たすことも、将来のわが子のために保管する選択も、どちらも正しい選択です。
提供のできないケース(慢性疾患、感染症、輸血の有無等)もあるため、最終的な検査基準を満たしてさい帯血を提供できるということは、とても貴重であることを認識する必要はあります。
出産前にパートナーとよく話し合い、病院やバンクと相談しながら、後悔のない選択ができるといいですね。
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